心不全

2026年7月作成

心不全とは

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出すことができなくなった状態を指します。その結果、血液が肺や肝臓、全身にうっ血するようになり、息切れや呼吸困難、むくみ、動悸、疲れやすさといったさまざまな症状が現れます。

心不全は特定の病名ではなく、高血圧や心筋梗塞、心臓弁膜症などの心疾患が進行することで生じる状態、いわゆる症候群の総称です。つまり、心臓の働きが弱くなった結果として引き起こされる状態を意味します。
また、心不全は心臓病の中でも主要な死因の一つであり、特に高齢者に多くみられる特徴があります。日本では高齢化が進んでいることから、今後さらに患者数が増加していくことが予想されています。

心不全は早期に気づき、適切に管理することで進行を抑えることが可能です。息切れやむくみなどの症状が続く場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。

心不全の種類

心不全は、心臓のどの部分に問題が生じるかと、発症のしかたによって分類されます。
心臓の部位による分類では、「左心不全」と「右心不全」があります。左心不全は、左心室から全身へ血液を十分に送り出せなくなる状態で、肺に血液が滞るため、呼吸困難や肺うっ血が主な特徴です。右心不全は、右心室から肺へ血液を送り出せなくなる状態で、全身に血液が滞り、むくみや腹水、肝臓の腫れなどがみられます。

また、左心不全が進行すると右心不全も引き起こされることがあり、この状態を両心不全と呼びます。
発症の経過による分類では、「急性心不全」と「慢性心不全」があります。急性心不全は心筋梗塞などをきっかけに突然発症し、強い呼吸困難や血圧低下などを伴う重篤な状態です。一方、慢性心不全はゆっくり進行し、初期は自覚症状が少ないものの、進行すると症状が現れやすくなり、重症化すると急性増悪を繰り返すことがあります。

心不全の主な原因

心不全はさまざまな心臓や全身の疾患によって引き起こされます。代表的な原因は以下のとおりです。

虚血性心疾患

心臓に血液を送る冠動脈が動脈硬化により狭くなる、または詰まることで発症します。狭心症や心筋梗塞がこれにあたり、心筋に十分な酸素や栄養が届かなくなることで心臓の機能が低下します。特に急性心筋梗塞は、急性心不全を引き起こす大きな原因となります。

高血圧性心疾患

高血圧が続くと血管や心臓に大きな負担がかかり、心臓の筋肉が厚く硬くなっていきます。その結果、心臓のポンプ機能が低下し、心不全につながります。

弁膜症

心臓の弁がうまく開閉しなくなることで、血液の流れが乱れ、心臓に負担がかかります。弁が閉じきらず逆流する「閉鎖不全」や、十分に開かず流れが悪くなる「狭窄」により、心不全を引き起こします。

心筋症

心臓の筋肉に異常が生じ、拡大・肥大・硬化する病気です。代表的なものに拡張型心筋症や肥大型心筋症があり、心臓の働きが低下して心不全の原因となります。

心筋炎

ウイルスなどの感染によって心筋に炎症が起こる病気です。心筋の機能が低下し、心不全を発症することがあります。

先天性心疾患

生まれつきの心臓の構造異常により、血流に異常が生じることで心臓に負担がかかり、心不全を引き起こすことがあります。

不整脈

脈の乱れによって心臓の働きが効率よく行えなくなり、心不全の原因となることがあります。特に頻脈が続く場合は、心臓に負担がかかり、心不全に進行する可能性があります。

肺疾患

肺高血圧症や肺血栓塞栓症(肺の血管が血栓で詰まる病気)、肺性心などの肺の病気は、心臓に負担をかけることで心不全の原因となることがあります。

薬剤性

一部の薬剤は、副作用として心臓の機能に影響を与え、心不全を引き起こすことがあります。代表的なものとして、抗不整脈薬やβ遮断薬、抗がん剤などが挙げられます。服用中の薬について不安がある場合は、医師に相談することが大切です。

心不全の症状

ピンク色の痰について

心不全では、血液の循環が悪くなることで体内に水分がたまり、呼吸困難むくみが主な症状として現れます。体重の増加や尿量の減少、足のむくみなどもみられるようになります。
とくに肺に血液が滞ると、水分がたまって酸素の取り込みが低下し、息切れや呼吸困難、動悸、倦怠感、咳や痰といった症状が現れます。また、横になると呼吸が苦しくなる「起座呼吸」や、夜間に急に息苦しくなる症状が出ることもあります。
さらに重症になると、肺にたまった水分に血液が混ざり、ピンク色の泡状の痰が出ることがあります。これは肺水腫のサインであり、早急な対応が必要となる状態です。

心不全の初期症状

心不全には、これといった明確な前兆があるとは限りません。特に慢性心不全では、体が心臓の働きを補おうとする「代償機構」が働くため、ある程度進行するまで症状が現れにくいという特徴があります。
そのため、わずかな変化に早く気づくことが重要です。代表的な初期症状としては、これまで問題なかった軽い運動での息切れが挙げられます。坂道や階段の上り下り、重いものを持ったときなどに、以前よりも息切れを感じる場合は注意が必要です。
また、夜間にトイレの回数が増える(夜間頻尿)や、短期間での急激な体重増加も、体内に水分がたまっているサインとして心不全の可能性があります。
このような症状に気づいた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

心不全の検査

種類
内容
血液検査
血液検査では、主に「NT-proBNP」というバイオマーカーを測定します。
NT-proBNPは、心臓機能が低下して心臓の負担が大きくなるほど(その重症度に応じて)血液中に多く分泌され、数値が高くなります。そのため、NT-proBNP検査は心不全の早期発見に役立つと考えられています。
胸部レントゲン検査
胸部をX線で撮影し、心臓や肺の状態を確認します。
心臓の大きさの変化や、肺に血液や水分がたまっていないか(うっ血や胸水)を評価することができます。
心電図
胸などに電極を装着し、心臓の電気的な活動を記録する検査です。
不整脈や心筋梗塞の有無などを確認することができます。
心エコー(超音波)検査
超音波を用いて心臓の形や動きをリアルタイムで観察する検査です。
心臓の肥大や拡大、弁膜症、心筋の動きなどを確認でき、心不全の評価に非常に重要です。また、血液のうっ滞の程度も把握できます。
心臓カテーテル検査
カテーテルを血管から心臓まで挿入し、心臓や肺の血圧や血流を詳しく測定する検査です。
心拍出量や肺動脈圧などを正確に評価でき、必要に応じて心筋の組織を採取することもあります。なお、この検査が必要な場合は、連携する医療機関をご紹介します。

心不全の治療

心不全の治療は、基本的には安静状態を保つことを重視し、必要であれば酸素投与を行います。むくみや息切れの症状がある場合は利尿薬や再発防止用の薬を処方しますが、これら薬物療法では改善しない場合には、原因疾患に合わせた手術の検討も行います。
また、虚血性心疾患を発症している場合はカテーテル治療を行うことが多く、心臓弁膜症を発症している場合には弁の修復や交換などを目的とした手術が行われます。
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